先日、「DEEN」の武道館ライブに向かう途中、作詞家の
「岩谷時子」さんがお倒れになったとの知らせを聞きました。
もう何年も前から、ご病状の経過をお聞きしておりましたので、
よく今日まで命を支えられたものと、周りの方々のご苦労、そして、
ご本人の生命力に、悲しむと言うよりは、拍手を送りたい気分です。
昨日も書かさせて頂きましたが、戦後の焼け野原から、国民が一丸となり、
誰もが望む平和な夜明けに向かって、その生きるエネルギーを燃やした
高度成長期という時代を、陰で支えた流行歌の功績は大きいと思います。
岩谷先生の代表曲「夜明けの歌」や「君といつまでも」、「恋の季節」等、
数々の名曲を見てみますと、「夜明け」「明日」という言葉が示すように、
希望を感じさせる「詞」が多く、昭和の時代の活気がそのまま作品に
封じ込められているような懐かしさを覚え、素直に口ずさむことが出来ます。
最近の流行歌に比べると、岩谷先生の時代の作品は、
ちょっと物足りないかな?と、思うほど、余計な言葉が無く、
それだけに奥が深いような気もするし、でもネ、歌なんて
そんな小難しいことを思わず、単純に捉えて愉しみなさいよ!
って、言われているような気もするし…どっちにしても、
説明や理屈や自己主張の多過ぎる歌詞は、却って
底が浅く感じられ、詞のテーマがピンボケしがちですから、
たまに原点に帰って、作詞家を目指している方などは、
4行詞から始めてみるのも勉強になるのではないかと思うのです。
先日、虫の知らせか、岩谷先生の作詞でもある、加山雄三さんの
<ながれ星>を、ご紹介致しましたが、如何でしたでしょうか?
他にも、「いいじゃないの幸せならば」「男の子・女の子」等、
多くの歌手の方々に詞を提供されていらっしゃいますが、
沢田研二さんの「君をのせて」が、私はたまらなく好きです。
他に、加山雄三さんの「たった一つの恋」「君のために」「ある日渚に」etc.
曲の良さも手伝って、加山さんの作品は好きなものばかり…
ご自身のご家族はいらっしゃらなかったようですが、多くの作品を
子供として、此の世に遺され、草野さんのようなおやさしい方々に
晩年は大切にされ、帝国ホテルで優雅に暮らし、子供に還って、
看取られて、生涯独身の偉大なる作詞家として天寿を全うされた
岩谷時子さんの人生は、それなりに恵まれていたのではないかと思います。
毛皮のコートをたくさんお持ちでいらっしゃるということで、私にも
いらないかと言われましたが、毛皮は動物愛護の精神からしても、
あまり趣味ではないので、お断り致しました。粗末になってもいけないし…
越路吹雪さんのマネージャーをされ、「愛の讃歌」等、多くの訳詞もこなされ、
裏方ではあったけど、華やかな暮らしの中で、何をどう見つめて
生きていらしたのか… その胸の内を聞いてみたい気がしますけど、
もう、岩谷先生が遺した「詞」から、窺い知るしか出来なくなってしまったことが
寂しいような、でも、歌わせて頂く時の醍醐味でもあるような…
新しい時代の夜明けに希望を託し、時代を恋人に愛を歌に託した
岩谷時子さんのご冥福を、心よりお祈り致します。