カテゴリ: 詞。あるいは、詩のようなもの。

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逆上がりは得意だった

大車輪も出来た

小学生の頃は
走るのも早かった

そんな話をしながら
秋茄子の煮浸しを肴に
ひやおろしを口に含む

のどごしを酸味のある
想い出が通り過ぎて
胸にぽたりと落ちる時

過去の栄光が
千鳥足を始める

灰色の厚い雲は
記憶を曖昧にしようと 
小雨をぱらつかせるが

初めての体育の日の
あの青空の輝きを
くすませることまでは
出来やしない

運動会の歓声も
聞こえない故郷に戻り

人生をやり直すには
歳をとり過ぎたけど

放射能に汚染された
大地にでもいいから

あの美しい紫の
茄子の花を もう一度
咲かせてみたい

東京オリンピックから
52年経った10月10日

何もかもが変わった…

賑わいを忘れた
体育の日の今日

慰めに植えた
プランターの茄子が

深まる秋の中で
懸垂をするかのように
ぶら下がっている

懸命に ただ懸命に…

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12.15












サンタクロースが父だと
判ったのはいつだったろう?

クリスマスケーキを買いに
父が街へ連れて行ってくれた時

寒さしのぎに暖簾をくぐった
ガード下の小料理屋

カウンターだけの小さな店は
時折り頭上を走る
井の頭線の電車の音で
会話が聞こえなくなる

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何を食べたかは忘れたが
割烹着姿の綺麗なママさんが
幼い私の頭を 
やさしく撫でてくれたことは
今でも憶えている

父とその人の楽しそうな顔に
母が欲しいと思った

母の胸は父よりも
柔らかいのだろうと想像した

サンタクロースが
父であることは判ったが

その人が母であることは
恐らくないだろう

が、定かではない…

父がサンタクロースなら
母をプレゼントしてくれるかも

いらすとや サンタとトナカイ













ガタンゴトンガタンゴトン…

無邪気なのか
大人びていたのか

楽しかったのか
哀しかったのか…

父に抱かれ 店を出ると 
外はうっすらと雪化粧

温かい父の胸に顔を埋め
見送るママさんに手を振った

12.15










大好きな父と二人
小雪舞う吉祥寺の街を
そぞろ歩いたクリスマスの夜

父がいればいい…
母は要らない

サンタクロースも
プレゼントも要らない

ガタンゴトンガタンゴトン…

あの小料理屋も ママさんも
そして父も 昭和も

すべては時の彼方

12.15










井の頭線のガード下に響く
枕木の音を
ジングルベルに置き換えるのは
無理があるだろうか

ガタンゴトンガタンゴトン…
ジングルベルジングルベル…

父と過ごした時代を載せて
サンタクロースがやって来る

サンタクロースは父じゃない
もう父はいない

クリスマス サンタクロースの表札











 

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木枯らしの訪れを
待たずして散った柿の葉を
眺めるように 月は輝く

わずかに残る実を
金色に照らし
その数を私に教えながら
月は満ちてゆく

明日また 鳥が来て
柿の実をついばむだろう

そして私は
薄くなった日めくりを
一枚ちぎる

師走間近の晩秋を彷徨う
夢追い人の靴の音に
そっと耳を澄ましながら


枯葉黒いハイヒール














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