逆上がりは得意だった
大車輪も出来た
小学生の頃は
走るのも早かった
そんな話をしながら
秋茄子の煮浸しを肴に
ひやおろしを口に含む
のどごしを酸味のある
想い出が通り過ぎて
胸にぽたりと落ちる時
過去の栄光が
千鳥足を始める
灰色の厚い雲は
記憶を曖昧にしようと
小雨をぱらつかせるが
初めての体育の日の
あの青空の輝きを
くすませることまでは
出来やしない
運動会の歓声も
聞こえない故郷に戻り
人生をやり直すには
歳をとり過ぎたけど
放射能に汚染された
大地にでもいいから
あの美しい紫の
茄子の花を もう一度
咲かせてみたい
東京オリンピックから
52年経った10月10日
何もかもが変わった…
賑わいを忘れた
体育の日の今日
慰めに植えた
プランターの茄子が
深まる秋の中で
懸垂をするかのように
ぶら下がっている
懸命に ただ懸命に…